緑の調律日誌

咲き続けるコマクサ

2010/08/26

白馬五竜高山植物園でも象徴的とも言えるコマクサの花。

高山植物の女王としても知られ、全社員の名刺にも描かれています。

このコマクサ、6月の終わりから咲き始め、7月には最盛期を迎えます。

…では、開花はいつ頃終わるのか…?

実は8月最終週の今でもこれだけの花が咲いています。

写真をよく見ると、花がついていない花茎がありますが、これは既に花が種となり落ちた跡です。

このコマクサ、存外に花期が長く、6?7月に咲き始めた最初の花が種となった後も新たにつぼみが出てきて花を咲かせます。

ドライに考えれば、植物園を経営する上では花期が長い、それだけで魅力的な商品であると言えるでしょう。

そう考える前に、何と強くたくましく、可憐な花なのだろうかと感じるものです。

高山の短い夏という限られた時間で最大限の繁殖を行い続け、子孫を残すという目的を達成している進化の一つの形なのかもしれません。

そして、その種子繁殖もなかなかのもののようです。

昨年パラパラと種を蒔いてみたところからは無数の芽生えが見られます。(画像をクリックしての拡大推奨です)

この種が花を咲かせるのはいつか?

試しに同環境で実験をし、経年変化を観察したところ、最短で2年で花が咲きました。3年経つと充分な大きさで花が咲きます。

コマクサが咲くには長い時間がかかる…とよく言われますが、山の厳しい環境では、おそらく岩も崩れやすく時には根や葉が寸断されたり、強風、凍結などの影響もあり、時間がかかるのでしょう。

しかし、生物的には存外に早く成長する能力を備えているようです。だからこそ他の植物が生存し得ない厳しい環境で生き延びているのでしょうが。

植物を見に来られる方の多くが憧れるコマクサの花ですが…、知れば知るほど、魅力的な高山植物に思えてくるようです。