午後2時半。一回目の放送を入れる。
『時間になりましたら黙祷を行います』
微かに舞っていた雪、風が吹いて密度が濃くなってくる。
冬の間、植物栽培はひとり仕事、
社員として受け持つ部署は、受付および放送業務。
心を落ち着かせ、マイクを取った。
『黙祷』
昨年、被災地を訪れたことを思い出す。
訪れて初めて気がついた恥ずかしい話、
「がんばれ東北」「がんばろう東北」
日本語の一文字違い、そこに見える責任と覚悟の大きさ。
当事者でない自分が多くを語ることは出来ない。
ただ、そこにある全てが現実なのだと、きちんと知ることが出来た。
(当事者:実は東京に居て帰宅困難者になりましたが、命に危険を感じるものは無く)
『黙祷、ありがとうございました』
放送ブースから見えるゲレンデの空気が動き出したのを感じる。
吹雪出した雪は、しばらくして止んだ。