2019年9月24日、白馬五竜高山植物園にて、
講演会『高山植物を、守り、育てる、最前線』が開催されました!
主催は、(公社)日本植物園協会です。
今回の運営、告知、ポスター作成など、坪井(ブログ執筆)が担当させていただきました。
「植物の保全」をテーマに、講演者自身がどのようなことに取り組んでいるか、今後どのようなことが必要か、それをお伝えする機会です。
当日は、植物園関係者だけでなく、ご招待させていただいた官公庁の方々(環境省、中信森林管理署、長野県自然保護課、白馬村)も来られ、ご案内させていただいた白馬山案内人組合の方々や、自然保護レンジャーや宿泊業の方々など多くの方が来られました。
参加は約80名。盛況でした!
白馬村だけでなく、長野市、安曇野市、富士見町、塩尻市、信濃町、伊勢原市といった、遠方からも来ていただけました。
司会をしながら、「白馬岳に登ったことがある方」と手を挙げていただいたところ、
7割ほどの方が手を挙げられました!
やはり、高山植物の保全について非常に興味を持っていただける方々が来られたようですね。
最初は、国立科学博物館 筑波実験植物園の遊川知久氏。
種の保全に多く取り組まれ、植物園協会としても多様性保全委員をされています。
高山植物に限らず、日本植物園協会がどのように絶滅危惧植物の保全に取り組んでいるか、
具体的な事例はどのようなものか、密度の濃い説明をしていただきました!
長野県環境保全研究所の尾関雅章氏。
自然豊かな長野県において環境全般の課題については、長野県環境保全研究所が研究し、解決に向けて取り組まれています。
その中でも植物について研究をされているのが尾関氏になります。
長野県にはどのような絶滅危惧種があり、その性質や、取り組みについて説明いただきまいた。
最近はシカが増え、貴重な植物を食べてしまう事例も多く起こっています。
植物を守るには、シカの課題を解決せねばならないようです・・・。
30年以上、白馬岳の植生復元に取り組まれてきた、土田勝義信州大学名誉教授。
自然保護の概念が希薄だった時代に、何が起き、どのような活動を続けてきたのか・・・
白馬村、「回復作戦へ」。1981年の新聞記事です。
登山道の在り方が、昔は違い道沿いの植物が相当荒れたようです。
今では当たり前のことが当たり前でなかった時代のことですね。
私(坪井)は、信州大学時代、土田先生のもとで高山植物を学んでいたこともあり、
これらの保全事業に学生時代から参加させていただきました。
生まれる数年前から始まった事業であり、2006年には最後のまとめをさせていただきました
長きに渡る積み重ねでした。
白馬岳での植生復元の経験が、現在でも各地で活かされているところです。
森和男氏による、高山植物栽培の歴史。
森和男氏は、東アジア野生植物研究会を主宰され各地の植物や歴史を明らかにしつつ、
数多くの植物園指導をされています。
例えば・・・白馬岳の植物についての最初の報告についての説明など、
あらゆる古書から導かれた歴史を紐解いていきます。
森和男氏のすごいところは、古書の内容を把握し、複数の史料から結び付けた事実をご自身の言葉で完璧に語られること。
そして、そこに何が必要か、今への意見を積極的に述べられます。
昔から野草の栽培は親しまれてきているものの、最近では真に知識と経験を持った栽培家が高齢化で絶滅していくそうです・・・。
多くの県には、〇〇県立植物園のような植物園があり、公園や温室などを楽しみつつ、植物の収集や栽培、保全のための研究や実践をされています。
一方で、自然豊かな長野県にはそういった役割を担う植物園がありません。
植物園が出来なかったのも、植物を見たいのならばあちこちの大自然に行けば良かったから、でしょうか。
しかし、現在では「保全」の点において植物園の必要性も感じられるところです。。
白馬五竜高山植物園は、民間のスキー場会社ではありますが、「高山植物」に特化した日本植物園協会加盟の植物園として、高山植物の保全や啓発活動を進めているところです。
それが企業価値を高めることではありますし、白馬のブランド力向上にも繋がっていくはずです。
最後の講演は私(坪井)でした。
内容は、日本植物園協会としての保全の取り組みから、白馬五竜高山植物園で実践した調査、種子採取、栽培のこと。
講演スライドの一部を、このブログ記事の最後に貼り付けておきます・・・!
ところで、講演会の前の時間では、絶滅危惧種の保全についての会議でした。
日本植物園協会において絶滅危惧種の保全に取り組む植物園と、調査でお世話になった官公庁の方々に来ていただきました。
今後どのように保全を進めていくか、有意義な会議となりました。
講演会の後は、植物園関係者と官公庁の方々と、白馬五竜高山植物園の見学を行いました。
北アルプスは見えない天気でしたが、どのように植物を展示しているか、見ていただきました!
北アルプスの高山帯、植物の群落を再現した『白馬連峰高山植物生態園』。
登山道の入り口のブナ林から、ハイマツ帯やお花畑を再現したエリア、山頂のようになった部分もあったり、
高山植物を、学び、親しむ場所として、終わりなき完成を目指して取り組んでいます!
こちらは造成中ですが・・・来年度より植物園の絶滅危惧種を集めたコーナーにする予定です!
植物園としての強みは、植栽やレイアウトを造り変えていけること、植物を理解できる看板を設置できることです。
国立公園の大自然は私も大好きですが、コンパクトに、学べる場所に出来るのは植物園ならではです!
次の日9月25日は、植物園の皆様と栂池自然園の視察に伺いました!
まずはゴンドラに乗る前に、白馬観光開発の山岸信也さんに栂池を楽しんでいただく企業としての取り組みをご説明いただきました!
栂池自然園の手前にある栂池ビジターセンターでは、猪股崇志さんに、ビジターセンターのご紹介をいただきました!
大型パネルやボルダリングなども設置された、最新のビジターセンターです!
雨の日でも楽しめる、学べる施設です。
植物園では展示も大切なところです。栂池ビジターセンターの取り組みについて、皆様、大変興味深々でした!
広大な湿原を散策できる栂池自然園。
全国の植物園からは初めて訪れた方も多く、長野県の大自然を知っていただきました!
やっぱり植物大好きな皆様なので、花が終わった植物でも興味深々でした。
視点がフツーでは無いところが、私自身も近くのフィールドを見直すきっかけになりました。
栂池自然園の紅葉は、これからどんどん深まります。
多くの方々に見ていただきたい美しい場所です!
参加いただいた皆様、ありがとうございました!
【参加植物園】
東京大学小石川植物園・日光植物園、名古屋市東山植物園、国立科学博物館筑波実験植物園、茨城県植物園、咲くやこの花館、富山県中央植物園、山形市野草園、豊橋総合動植物公園、六甲高山植物園、白馬五竜高山植物園、武田薬品工業㈱京都薬用植物園
9月26日の白馬五竜高山植物園。しっかり北アルプスが見えました!!
これから紅葉が始まり、秋が深まります。
この立地を活かした高山植物の保全の取り組みを、今後も進めていきます!
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以下、坪井が講演会で発表したスライドの一部です。
参考にどうぞ!