緑の調律日誌

その他ひとり言

園内の片付け 池の掃除

2010/10/14

園内の営業も残すところあと半月となりました(11月3日まで)。

園内のロックガーデンには人工の池があるのですが、夏の間に土砂が流れ込んでしまうため、秋のこの頃には土砂をすくい出す作業を行います。

水路周りや周辺からの土砂が入るわけですが、例年流れ込む土砂は少なくなってきてはいます。

それでも一日作業になるわけですが、あと何年かして周りが安定してきたら、作業労力も減ることでしょう。池の周りに植物を今以上に増やすことも必要になるかもしれません。

 

ところで、小さな花を見つけました!

初夏に咲くミヤマアズマギクですが、指先一つで咲いています。

これを人工的に咲かせられたら面白い、などと思いつつも、自然の面白さを目の当たりにするようです。

 

テレキャビンから見える木々も、紅葉が進んできました!(写真は10月14 日)

植物園内から地蔵の頭にかけては紅葉の最盛期を迎えています。

テレキャビン周辺の紅葉はあと一息で最盛期です。

毎日山麓からテレキャビンで山の上へ上がるわけですが、毎日のように景色が変化していくのには驚かされます。

こちらの写真はチングルマの紅葉です。

ブナやカエデだけではなく、高山植物の葉も紅葉するのが面白いところです。

週末にはかなりの紅葉が見られるかと思います。

晴れを祈りつつ、皆様をお待ちしております!

共通点、尾瀬の至仏山と白馬五竜

2010/09/30

夏が来れば思い出す、遥かな尾瀬、

尾瀬と言えば名前を知らない人はほとんど無く、湿原が有名な場所でもあります。

そして、湿原に隣接する百名山の2228m至仏山(しぶつさん)も知る人ぞ知る有名な高山植物の山でもあります。

至仏山の中腹からの景色です。

正面には尾瀬ヶ原と燧ケ岳(ひうちがたけ)が広がります。

ところで、この至仏山ですが、白馬五竜高山植物園の上部に整備されている歩道、地蔵の頭を中心とするアルプス平自然遊歩道と一つ、大きな共通点があります。

これは登山道の光景ですが、アルプス平自然遊歩道を訪れたことのある方、なんとなく岩の雰囲気が地蔵の頭に似ていると思いませんか?

これは超塩基性岩の「蛇紋岩」という岩石になります。

そして、この岩の特徴は『植物の生育には適さない』、というもの。そのため、高い木が生えにくくなり、蛇紋岩地域での生育が可能な植物や、高い標高でないと見られない背丈の低い高山植物がみられるようになります。

この特徴は地蔵の頭でも同じであり、ミヤマナラを中心として本来の標高には見られない植物が出現するのが共通しています。

 

ところでこの蛇紋岩、滑りやすい石としても有名です。

至仏山の登山道では蛇紋岩の上を歩く箇所が多く、水も良く染み出ていて滑りやすくもあります。

また最近では、下りでは転びやすい事、植生保護のため、尾瀬ヶ原側の斜面は上り専用にもなっています。

※アルプス平自然遊歩道では滑りやすい箇所はほとんど無いです

※上記の「正しいすべり方」は、山の鼻ビジターセンターの展示物です。滑りやすさと安全喚起を促すものです、念のため。

 

尾瀬の山に似た特徴が園内にもある、そう考えると至仏山が身近にも思えてくるようです。

高い木が無く、紅葉がきれいな低木も多くなるのも特徴的あり、これからの秋が楽しみでもあります。

晴れ+山が見える!

2010/09/25

今日(25日)は最高の快晴でした!

テレキャビンで上がった園内からは標高3000m級の北アルプスが一望出来ます。

AM8:00の園内の様子。写真左の山は白馬三山です(左から白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳)。

視線を左に移すと北アルプスの山並みが続いています(写真左が五竜岳)。

 

山頂付近の白い岩肌と木々の濃い緑のコントラストが実に鮮やかです!

秋といえど、これくらい晴れる日は珍しいものです。

あたりは冷たい空気が気持ち良くとも寒いわけではない、そんな感じです。

この土日で北アルプスに登る方々は最高だったことでしょう。

夕方5時近くでも、これだけ晴れています。

秋の花は園内や遊歩道にさりげなく咲いています。その分、一面に咲く派手さが無いので遠目には気づきにくいところもあり、だからこそ秋晴れの景色のもとで、この広い空間と合わせて楽しんでいただきたいものです。

明日も晴れでしょうか(追記:『晴れ』と『山が見える』は別モノですが)。

皆様が訪れる日も良い天気であることを願いつつ。

種をまく事

2010/09/24

植物の「種」を一度も目にした事がない人はおそらくいないし、ほとんどの方が種をまいて植物を育てる体験をしたことがあるかと思います。

小学校のころに植物の種をまいた時は、芽が出ると誰しも大なり小なり感動を覚えるものです。

そしてそのトキメキを今も忘れぬまま、いや、更に深めて植物園で育苗を行っています。

昨年から種をまき始め、今ポットの形になっているものは記録しているだけで7815ポットでした。

管理している私の技術も、育てている数も植物園としては小規模ですが、今後も進歩させていきます。

 

ある植物の先生が言ったこと、

「野生の植物が種を落として、それが芽生えて育つ確立なんて何万分の1も無い。きちんとした管理で種をまけばかなりの確立で芽を出させ、育てることが出来る」

なるほど。タンポポもコマクサも、ひとつの花からは相当な数の種が出来ます。しかしそれが「芽生え」、「育ち」、「花を咲かせる」には相当な淘汰を受けることになる。

例えばこの3段階がそれぞれ1/10の確立で次のステップへ行くとしても、1/10×1/10×1/10で1/1000、種1000個あっても一つ咲くかどうか。実際はもっと条件は厳しいでしょう。

 

自身で種を育てると色々なことがわかります。

例えばニッコウキスゲは4月から9月までで、これくらい育つのだなとか、

フシグロセンノウは一年でしっかり花が咲くのだな、とか。

技術書や人から聞いたものであっても、自分の目で実践すると確実に理解でき、野生の植物を見る視点も多角的になってきます。

育苗施設は今のところ一般の方へは非公開です。

しかし、栽培の手順などを踏まえ、植物の成長過程、それらの野生での姿、そういったものを解説したガイドツアーなどもいずれ整えていきたいとは考えています。

育てた苗を種類とタイミングをみて植物園内に植えたりします。

写真では園内のロックガーデンの滝の横に植えているところですが、こういう植栽をする場合、大きすぎる、小さすぎる苗ではうまく小さな隙間に収まらず、自社で育苗していると適切な大きさのものを選択出来るという利点があります。

植えたもの全てが育つとは限らないものの、根付いたものは確実に岩の奥まで根を伸ばすでしょう。

・・・それにしても、手をかけた植物たちが園内とはいえ、朝早く来て水をやり、就業後も気づいたものからポットにわけて、育てていたものが手を離れるのは・・・「貴様に娘はやらん!」というお父さんの気持ちもわかる気がします (私は25歳独身ですが

 

野に咲く花の種が花を咲かせる確立はゼロに近い数。

連綿と続く生命の確率論、それをいかに1に近づけるか。

確かな答えは出ないものの、答えを目指して探究心は続きます。

ちょうちょ

2010/09/19

秋の気配が濃くなってきた園内でも、元気にチョウが飛んでいることがあります。

こちらはアサギマダラです。

アゲハチョウくらいに大きな体ながら、フワフワと飛ぶのでなかなかに目立ちます。

海を渡るチョウとしても知られ、1000km以上も移動することもあるようです!

見つけたのは園内でもリフト乗り場のすぐそばですが、運が良ければリフトに乗りながら見られるかもしれません。

写真のようにヨツバヒヨドリ(もしくはフジバカマ)の蜜を吸っていることが多いです。

コンパクトデジカメで数cmまで近寄って撮ったものですが、ピュアな心持ちで驚かせないように近寄りましょう(笑

こちらはキアゲハです。地蔵の頭で良く飛んでいるのを見かけます。

アゲハチョウはミカン科の植物を、キアゲハはセリ科の植物を食べます。

園内ではシシウドなどを探すと幼虫を見つけることが出来ますが・・・

育苗しているセリ科の植物までも食べてしまいます・・・。

育てている苗は、風通しも良く、同じ植物ばかり並べているので、きわめて親の虫に見つかりやすく放っておくと散々なことになることが多いです。

ガの幼虫など大抵はつぶしてしまいますが・・・、昔からアゲハチョウは良く育てていたため、ドライになりきれず情も移り

「おい、てめえら、あっちのヤブのシシウドでも食ってくれ」ととりあえず移してみます。

ところで、この夏、初めて見たのがコマクサの花をがっつり食べられているところ。

花茎にシャクトリムシが一匹、懸垂するようにぶら下がっています。

シャクに障るとは、こういう事でしょうか(笑

 

話がチョウを見ようから、葉が食われることに逸れてしまいました。

園内では植物の他にヒョウモンチョウの仲間やクジャクチョウなど高原らしいチョウも多く見られたりします。

視点をそちらに移して園内を見るのも楽しいかもしれません。

チョウが蜜を吸うための花と、幼虫が食べるための植物と、両方バランス良く育てたいものです。

タネを集める

2010/09/10

「ユウスゲ」という花をご存知でしょうか?

ユリの仲間で、ニッコウキスゲに近い種類、と言えばピンと来るかもしれません。

野生ではニッコウキスゲよりも標高の低い場所でみられ、ニッコウキスゲが登山の花なら、ユウスゲは長野県では人里やや高めの場所で咲いています。

漢字では「夕菅」。その名の通り、夕方から朝にかけて咲きます。

…個人的には、ニッコウキスゲよりもユウスゲの方が好きだったりします。ニッコウキスゲよりも背が高く、花の線は細く、色使いもレモンイエローと優しく、どこか女性的なものを感じます。

また、ニッコウキスゲと違ってはっきりとした匂いがあるのが特徴です。

しかし…正直ビミョーな匂い……。花の時期は過ぎているので、来年ぜひご確認を。

 

このユウスゲ、高山植物園内にもみられますが、それよりも山麓のエスカルプラザまわりに多く花を咲かせます。

そしてその種が採りどきでもありました。

果実から黒い種が覗いて見えるものを集めたところ、どんぶり一杯ぶんくらいになりました。

これを自宅でテレビを流しながら、落花生のカラを剥くように延々と種を取りだします。

ところで、気になったのは一つの果実(一つの花)には種がいくつ入っているのか?

健全な果実を10個選んで種の数を数えました。

22、23、28、24、13、28、29、34、17、15、合わせて233個。

果実一個あたりに23.3個の種が入っていました。

一つの茎に花が複数つくもので、例えば一株に5個花が咲き、上手く種が実り育てば、一本のユウスゲから100本のユウスゲが育つのか!

しかし、アブラムシにかかったものは種が一個、0個のものもあるので、世の中上手くはいきません。

米のように研ぎ、米用の計量カップで計ったところ、今回1.5合の種が取れました。

このまま炊飯器で炊いてしまいたい誘惑にかられますが…、なんとかこらえて大事に育てるとしましょう。

 

ちなみに熟していない種がまだ敷地内にたくさんあります。

これらを全てうまく育てれば…、素晴らしい花畑が出来ることでしょう!

ただし、ニッコウキスゲのように自生で群落を作るような種類ではないので、自然に見せつつ、上手く魅せられるような植え方をしたいものです。

高知県での植物

2010/09/04

しばらく高知まで行きました。

園芸、植物園関係者の懇親会が大阪であったものの、若い会員数名が「高知へ植物を見に行こう!」という、という企画があり、真夜中に高知へ向けて出発したものです。

高知県立の牧野植物園の方が講師役としての植物観察会への参加としての植物観察。

市内近郊の山ですが、海に近い標高にも関わらず、大規模な草原の景観、草原性の植物が数多くみられ興味深い山でした。

馴れない四国だけに聞いたことのない植物も多く、メモやシャッターを押す手が止まりません。

県内では絶滅危惧種のものも高知では普通種であるものもあったりするようです。

そして、今回のメインとも言えるダイサギソウは見事なものでした。

午後は植物学者の牧野博士ゆかりの山まで数人で植物観察へ。

薄暗い林の下でコオロギランを見ることが出来ました。花は数ミリの大きさで、午前中のダイサギソウと比べると華やかさはやはり劣りますが、博士が新種として発見した植物を本場で見ることにはロマンがあるものです。

 

日本が世界に誇る植物学者の牧野博士の業績を顕彰する「牧野植物園」を尋ねました。

近代的なデザインの建物に一流の研究体制を整えた植物園は想像以上に「植物園としての理想」を具現化している植物園であるものと実感するものでした。

高知の植物を収集した生態園、高知の植物相の学術的調査や保全活動、薬学的視点での企業との連携、温度・湿度を正確に保つ標本庫、レベルの高い一貫した展示解説、何よりもそれらを管理する人たちの確かな技術と熱い思い。

 

自身のいる植物園、身近なフィールドを良く知ることは必要ですが、更に良く知るためにはやはり多くの他の場所を見ることも必要なります。

あの植物はここにしかないのか、他ではどうなのか、比べてどうなのか。

人と場所と植物が同じ植物園はどこにも無い、では自分と自分のいる場所は、どうあるべきか。

そんなことを考えながら、今日も園内の作業に励む日々です。

咲き続けるコマクサ

2010/08/26

白馬五竜高山植物園でも象徴的とも言えるコマクサの花。

高山植物の女王としても知られ、全社員の名刺にも描かれています。

このコマクサ、6月の終わりから咲き始め、7月には最盛期を迎えます。

…では、開花はいつ頃終わるのか…?

実は8月最終週の今でもこれだけの花が咲いています。

写真をよく見ると、花がついていない花茎がありますが、これは既に花が種となり落ちた跡です。

このコマクサ、存外に花期が長く、6?7月に咲き始めた最初の花が種となった後も新たにつぼみが出てきて花を咲かせます。

ドライに考えれば、植物園を経営する上では花期が長い、それだけで魅力的な商品であると言えるでしょう。

そう考える前に、何と強くたくましく、可憐な花なのだろうかと感じるものです。

高山の短い夏という限られた時間で最大限の繁殖を行い続け、子孫を残すという目的を達成している進化の一つの形なのかもしれません。

そして、その種子繁殖もなかなかのもののようです。

昨年パラパラと種を蒔いてみたところからは無数の芽生えが見られます。(画像をクリックしての拡大推奨です)

この種が花を咲かせるのはいつか?

試しに同環境で実験をし、経年変化を観察したところ、最短で2年で花が咲きました。3年経つと充分な大きさで花が咲きます。

コマクサが咲くには長い時間がかかる…とよく言われますが、山の厳しい環境では、おそらく岩も崩れやすく時には根や葉が寸断されたり、強風、凍結などの影響もあり、時間がかかるのでしょう。

しかし、生物的には存外に早く成長する能力を備えているようです。だからこそ他の植物が生存し得ない厳しい環境で生き延びているのでしょうが。

植物を見に来られる方の多くが憧れるコマクサの花ですが…、知れば知るほど、魅力的な高山植物に思えてくるようです。

でっかいワレモコウ

2010/08/17

ワレモコウ、という花を御存じでしょうか?

すっ、と伸びた茎の先に、指先くらいの紅色の花を咲かせる草原の花で、主張しすぎない美しさがある花です。

そのワレモコウの仲間の「カライトソウ」が現在、園内で最盛期を迎えています。

とても鮮やかな赤色が目立ち、見応えのある姿を見せますが、私は心の中で「おばけワレモコウ」などと呼んでいます。

近縁種のワレモコウに美しさを感じたことのある人から見れば、「ワレモコウを見習って、もう少し控え目にしてみろよ」・・・とおそらく思ってしまうくらいに目立つ姿と迫力を持っています。

山で見かけるカライトソウは、それなりに繊細なものでもありますが…、園内のものは良く育っています。ワレモコウと比べて観察出来る時期、今のおすすめです。

ヒマラヤの青いケシ、今年はよく咲いてくれました。

一番の見ごろ(花が多く、または綺麗に見られた時期)は、7月上旬?中旬でしたが、まだ最後の花が咲いています。

花は植えから順に咲いていくのですが、もう本当に最後ですね。来年また綺麗に咲かせられるようにしたいものです。

休日や就業後に

2010/08/02

休日や就業後には、バイクで出かけ植物を探したりすることがあります。

3メートルを超えるような「草」であるオオイタドリのトンネルをくぐりながらも見つけた植物が。

あ、やせいのシナノナデシコがあらわれた!

白馬岳登山にて、鑓温泉からの帰り道などで見かけたこともありますが、あまり野外では見かける機会は多くなかった植物です。

この日見つけたこの場所では、このシナノナデシコが今までに見たどの場所よりも多く咲いていました。

植物園内に生育するシナノナデシコをかき集めても、この場所の半径数メートルの方が断然数も密度も多いくらいに。

実は白馬駅から数キロと離れていない、なんてことのない河原です。

 

河原、というのは存外に珍しい植物がみられたりすることが多くあります。

高い木が生えていない、石がゴロゴロしている、などの環境は、ある意味で高山に似たところもあり、また上流から種が流れてくることもあることにもよります。

 

例えば白馬岳に登れば、例えば植物園を訪れれば、当たり前のように多くの植物を見ることが出来ます。

しかし、何かの植物はないかと、誰も知らないような場所を探し、探し当てた時は、楽しく、何事にも代えがたいものです。

こういった「ヒミツの場所」を、植物園を訪れた別の日に、探してみるのも面白いかもしれません。