緑の調律日誌

緑の調律日誌

最近の園内は

2011/09/25

台風が過ぎ去って連休は晴れが続いていました!

朝の営業前でも登山に行かれる方の車がこれだけ停まっています。

テレキャビンまわりのブナの紅葉はまだ先のようです。

白馬の田んぼが一望出来ますが、だいぶ稲刈りも進んできているようです。

晴れていても雲の流れが速く、山頂が見えるかは運次第のようです。

園内で綺麗に咲いているマツムシソウ。

咲いたら枯れる二年草であるため、管理をしないと花があまり咲かないときもありますが、間引きや肥料管理などが上手くいったのか、今年は今までで一番たくさん咲いている気がします!

シシウドの種の熟し具合が良い頃合だったので、園内で咲くことを想像しつつ種を振りまいて歩きます。

季節はずれのハクサンイチゲが咲いていました!

コマクサもまだ咲いていました!季節はずれというか、結構遅くに咲く個体もあるようです。

こちらは青いケシの葉。今年咲かなかったものでも、大きく成長しています。次の夏に咲くのを期待!

自然遊歩道ではリンドウの花がたくさん咲いています。

コウメバチソウもどんどん咲いて、今がピークでしょうか。

花だけではない、ナナカマドの赤い実。

紅葉が綺麗な木ですが、この時期の姿も見事です!

 

秋がどんどん深まる白馬五竜。

この3連休はたくさんのお客様のご来園、ありがとうございました。

来週ぐらいからは本格的な紅葉の時期も始まるでしょう。

またのお越しをお待ちしています!

第200回 長野県植物研究会例会

2011/09/14

長野県植物研究会、というものがあります。

県内の植物研究者・・・、大学、県職員、博物館、民間の調査会社など、現役で植物を扱う仕事をしている人から、仕事でなくとも植物の道を究めるべく生きがいとする方々まで、様々な人が集まり、長野県の植物をあらゆる面からとりあげ、研究している会、といったところでしょうか。

長野県だけでなく、各都道府県にはこういった集まりがあります。地域の植物の情報収集を広く行っているわけです。

例会とは、会員が一同に集まっての観察会、勉強会になるわけですが、40年以上の歴史の中で今回は記念すべき200回を迎えました!

県内各地で例会を行うのですが、1泊2日の今回の例会は、白馬でした!

村内北部にある塩島城址を歩き、出会う植物全てのリストを作りながら、種の見分け方や分布の仕方など話題はつきません。

2日目のフィールドは村内中心部にある平川の上流部。

遠見尾根と八方尾根を分ける川であり、蛇紋岩地の植物がところどころにある興味深いエリア。

長野県環境保全研究所の大塚氏によるシダ講義。

シダ研究家として代表的な氏の話に皆が耳を傾けます。

大抵の植物観察会は、出会う「花」を主に扱います。

流行?のエコツアーでは、植物だけでなく、動物や地球環境などを広く扱い、親しむことが目的です。

研究会の例会は植物を純粋に深め掘り下げていきます・・・。

花は花としてでなく、分類の一手段としての特徴として捉えます(勿論、楽しむ心は忘れない)。

動物や地球環境と絡めてみても、それはその植物が、何故ここに在り、どこに在り、どのように在るのか、それを理解、推測、探求、証明するための過程です。

大半の人が見向きもしないだろう植物について語り、見つけない植物を見つけ、静かに激しく喜び興奮する、そんな会(と思っています)。

夕飯を食べながら語るのは、どこの席でも植物を中心とした話題。

夕食後にはスライドを見ながら意見を交わします(今回は白馬ということで私が担当、園内のことや植物のことなど)。

部屋で飲む酒の肴は植物標本(『ここのこの毛の生え方がこのように違うでしょう!』など)。

 

こういう凄い人、素晴らしい人に囲まれた環境にいると、自分の経験の浅さ、目指すべきもの、それを深く感じます。

やらなければならない仕事だけでなく、やるべき仕事は何か、やる「べき」ことの上限を上げつつ具現化しつつ、邁進していきたいものです。

祖母のサギ草

2011/09/07

植物好きの祖母がいるのですが、良く見せてくれた花があります。

サギソウというランの仲間ですが、白い花がサギが飛んでいるように見えるものです。

それを室内で、室外で大事に育て、自慢げに話してくれたりしました。

育ててみて、と球根を貰い育てていたところ、ようやく花が咲きました。

両親、兄弟は、植物や山には全く興味がないものの、自分が大学で、仕事で植物を扱うようになったのも、この祖母の影響が大きいと思っています。

その祖母からもらった山野草ですが、大事に育てていきたいものですね。

秋は植え替え

2011/09/06

台風は去ったものの、何となく湿っぽい園内、それでも昨日9月5日の夕方には晴れ間も見えました。

こういう雨の日には植え替えや株分けの作業などをやるのが一番適しています。

秋は植え替えにも向いていて、雨の日なら水やりも不要なのです。

五竜かたくり苑のそばには小山さんという方が住んでいて、チョウの保護や食草の育成に取り組んでいらっしゃいますが、先日園内を訪れ、フジバカマの苗を渡してくださいました。

「アサギマダラの成虫が好きな花だからたくさん植えておいて!」

歩道沿いの見やすい位置にオミナエシやマツムシソウと一緒に植栽しました。

さて、来年咲くかな、そしてチョウは来るかな?今から楽しみです。

フジバカマの植栽地を整地する際に元から生えていたイブキジャコウソウを抜き取り、同時に園内の石組の隙間に植えたりします。

これらも来年の7月頃には咲いてくれるでしょう。

こちらは、ヒマラヤの青いケシ。

今年は咲かなかった株ですが、来年に向けて大きく育ってきています。

育てている青いケシの植栽、園内での植え替えなども、もうすぐ時期ですね。

 

花壇の花などは、植えてすぐ咲くものを選んだりしますが、高山植物園の植物の場合、「来年」を見越して植栽しなければなりません。

秋が終わり枯れ、冬の雪の下、そして春にきちんと芽が出るか・・・。

勘と経験に基づく賭けでもあり、予想以上に結果が出た場合は嬉しいものです。

通りすがりのお客様に何の作業か尋ねられ、最後には「来年には咲いているかもしれないので、また見に来てください」と言うと、皆さん楽しみにして下さいます。

さて、上手く咲くように今年できることを最大限がんばりましょう。

いろいろみごろ、いつでもみごろ

2011/09/01

お客様によく聞かれる言葉、

『みごろはいつですか?』

この問いする答え、ALWAYSみごろです。

というのも、花の移り変わりは激しく、雪解けすぐに咲く花もあれば、7月、8月と移り変わります。

『今咲いている花は、今しか無いと思ってください、半月後にはガラリとかわりますよ』

ということで、今みごろの植物を紹介します。

アカモノが実ごろを迎えています。赤いからアカモノ、単純です。

シラタマノキも実ごろを迎えています。白い玉だから、シラタマノキ、単純です。つぶすとハッカの匂いがします!

ゴゼンタチバナも実ごろです。赤い実が目立ちます!

チングルマの実ごろも続いています。花の期間は短いのですが、タネは長くついてるものです。

クガイソウも実ごろです。華やかな花が、渋めな姿に。

ニッコウキスゲも実ごろです。

花の咲き方にタイムラグがあるので、熟し方もバラバラです。緑も実もあれば、割れている実もある。

これらのタネを採集して、たくさんニッコウキスゲを咲かせられるよう頑張ります。

ナナカマドも実ごろを迎えています!

紅葉が綺麗な樹木ですが、ところどころ色づいているような。

花も綺麗なもので、花の見ごろ、実ごろ、紅葉見ごろ、みどころが多い樹木です。

 

植物には色んな姿があり、それぞれの姿に「見」所があるものです。

新芽、つぼみ、花、実、枯れ、冬芽。

どれが、みごろと感じるかは見る人次第。

シャレのつもりで書いたタイトルが、いつの間にか哲学に・・・。

一歩違う視点で見れば、おもしろいものが見えてくるでしょう!

もう秋か、そんな頃の花

2011/08/31

植物園も、やっぱり秋らしくなってきました。

園内を覆い尽くすカライトソウはまだまだ見ごろです!

けれど、何となく色が褪せてきたものも増えてきたような・・・。

地蔵の頭から。五竜岳?唐松岳の山肌には、まだまだ雪が見えます!

タムラソウの花が最盛期です!キアゲハも良く蜜を吸いにきます。

ゲレンデ斜面を歩く道沿いにもたくさん咲いています。

オヤマボクチの花。つぼみの頃は緑色ですが、いつの間にか赤くなって、気が付けばそのまま種になっています。

ハクサンシャジンの花も見ごろです!

たくさん写真・・・撮ってね(笑

ゴマナ。人には『ヒメジョオン』を小さくしたような花、と説明しますが、よくよく見るとやっぱり綺麗です。

オオイタドリも花を咲かせています。この花が綺麗だという人は全然居ませんが・・・、

撮り方によっては綺麗に写るものです!個人的に大好き。

シモツケソウの花。ゲレンデ斜面の見ごろは終わっているのですが、

湿地の雪解けが遅い場所(写真左上)では、ようやく咲き始めたようです!

コウメバチソウの小さな花も足元にたくさん咲いています!

こういう何てことのない場所に多いのですが、スキー履いてリフトを降りた先の夏に、こんな花が多いと考えると素敵なものです!

イワショウブの花も見ごろです!この花の茎は、何故かこれでもかというくらいネバネバしています。

エゾリンドウの咲き始めました。もう秋ですね・・・。

ノコンギクも咲き始めました。野菊の仲間は秋に多いのですが、もう秋の入り口です。

植物園内にはコバギボウシが大量に群生しています。

野生でこれだけ群生する場所も少ないですが・・・、ちょっと肥料を撒き過ぎたのかも・・・。

エンビセンノウ。この花ほど、「RED」という色が似合う花も少ないのではないでしょうか。

スキーシーズン只中に室内でタネをまき、冬中自動販売機の横の窓際で育て、一年経たずに咲きました。園内にあちこち植栽したものが良いアクセントになっています。

 

今の時期は、夏の名残を惜しむように残っている花と、秋らしい花が咲き始めた季節。

紅葉のシーズン前の花々をぜひ、見に来てください!

 

コマクサの最盛期は7月中旬ですが、花期が意外と長いもので、8月30日時点でも写真のような鮮やかな個体もあります。探してみてください!

ガラスの内側 ぶらさがる実

2011/08/25

以前、お伝えしたように、エスカルプラザ内にて、緑の「インドア」カーテンを作っています。

こちらの写真は7月20日のもの。

こちらは本日8月25日時点のもの。

いやあ、予想以上に育ちましたね!!

企画した時は遊び半分で何か出来たら良いなと考えたものの、想像よりきちんと育ってくれて良かったです!

実もきちんとなっています!

室内なので気づいたら人工授粉していますが、目線の高さで実がぶらさがっているのは楽しいものです。

ネットが斜め、実は垂直に垂れ下がる、自分らは内側にいる、そんな状況なのでぶらさがる実が良く目立ちます。

 

一番育っていたゴーヤを行き帰りに眺めていたところ、ある日無くなっていた!

誰かお客様か子供さんが持っていったのだろうか!?

そこで通りかかった社員の人が言う。

「そういえばさっき帰った役員の●●さん、片手にゴーヤ持っていたなあ」

暑い日にはクーラーのかかる室内ですが、清涼感をお楽しみください。

来年以降は緑の「インドア」カーテンが流行ること間違いなし!?

テレキャビン下の植物

2011/08/24

植物園内の植物で匂いや花が人気な植物、イブキジャコウソウ。

植物園や社員などの間では、略してジャコウソウと呼ぶことも多いもの。

けれど、「ジャコウソウ」そのものの植物もあり、それなりに見応えがあり、比較の意味もあり植物園に植栽したいところ。

白馬岳登山道の一部で見かけたり、信州大の演習林で見たりしたものの、身近に採集可能な場所は無いものか・・・。

 

などと思っていたら、テレキャビンの真下で見かけました!

乗っている最中に下を、じぃーーと見ながら花を探していると、ピンクの花が。

遠目にもジャコウソウに間違いない!

ということで、雨の止んだ午後、採集に向かうべく行ってきました。

背丈は数10cm。ピンクの大きな花が鮮やかです。

周りにはたくさんあるのですが、掘り取ろうにもなかなか土が固く綺麗には行きません。

何株か掘り出すのですが、地上部も根も脆く、細かくちぎれていきます・・・。

現在、育苗施設にて根茎を養生中。来年の春あたりに園内に移植できると良いですが。

こちらはキキョウの仲間のソバナ。

園内にも植栽した記録はあるのですが、植える場所が良くなかったのか、今では無くなってしまっています。

それでもテレキャビン下には野生のものが相当数あるものです。

試しにひとつ掘ってみたものの、土が固い以上に根がしっかり食い込んでいるので、掘るのは無理です・・・。

そこで、タネを採るべく、目印にピンクのテープをつけておきました。

花の間は目立つのですが、花がなくなるとヤブの中で探しにくいもの。

これなら目立つので秋でもすぐにわかります。

 

こういった地道な活動が植物園の展示種数を増やし、かつ地域産の価値ある植物を導入することになっていくことでしょう!

コマクサの海と水平線 燕岳

2011/08/19

コマクサの群生を見るのに良い場所は?

と、信大でコマクサを研究している研究室に尋ねた山のひとつ、燕岳。

登山口は安曇野の奥、中房温泉から。

山小屋泊で楽しんだり、日帰り山頂往復が一般的な、登山としては中級くらいの山のようで。

今回、山の全容(いやいや、ほんの一部か!)を見るべく、山頂を含めてぐるっと一周するコースを日帰りで行ってみました。

登山口から後半も過ぎたころにある合戦小屋。

索道会社にいるせいか、荷揚げ用ケーブルなどをじっくりと観察してしまう。

この小屋の名物は冷えたスイカ。毎日何個あげるのでしょうね。

写真奥に見えるのが燕山荘。

登山開始から3時間ほどで稜線へ出ました。

コースタイムでも4時間ほどで燕山荘へ到着するので、コマクサ見学登山入門には良いのかもしれません!

花崗岩で出来た山容は特徴的で、崩れやすい箇所があちこちにあります。

急すぎてハイマツなどが生育できない砂礫地には次々にコマクサがみられます。

花の「見ごろ」としては過ぎているのでしょうが、それでもまだ花も多いものでした。

もう、一面にコマクサだらけですね。

どこまでもコマクサが広がっているような。

植物の生育するのに適した環境とは何か、あらゆる方面から考えさせてくれます。

足元の土をすくってみました。

高山植物の培養土としてそのまま売っているよな砂礫。

こんな土で生育できる植物は非常に限られるわけですね。

今までの写真とは別の場所ですが、コマクサとチングルマが同居している場所もありました。この環境でこの組み合わせはなかなか無いような・・・。

 

コマクサ以外にも多くの植物をみかけることが出来ました。

チングルマの群生、雪解けが遅いのかまだまだ花も多いものでした。

ハクサンイチゲ、わずかながら咲いていました。

ヨツバシオガマ、まだ咲いていました。群生がすごく綺麗な花です!

ムカゴトラノオ、花が咲いたあとに「むかご」が出来てくるのですが、

もう、その場で発芽しているものも多くありました!

ミヤマリンドウ、他の草に埋もれるようにみつかります。こういうリンドウは高山に来ないとみられないですね!

ミヤマトリカブトも次々に咲いてきていました。

サラシナショウマ、これだけ咲いてくると夏も終わりですね・・・。

今回興味深かったのが、この道。何がかというと・・・、

左を見ればタカネシュロソウだらけ(茶色い穂に花がたくさん)。

右を見ればバイケイソウだらけ(コバケイソウではなく、バイケイソウです)。

 

今回の登山ルートは、中房温泉から燕山荘、燕岳と行き、そのまま北上し中房温泉まで戻ってくるルート。

行った人の話や、各ブログなどを見ると、燕岳まで行ったら、同ルートを引き返すのがよくあるルートのようです。

けれど、そのまま北へ行くと花も多くとても面白いルートでした。後半の写真は全てこのルートです。

その代わり誰ともすれ違わないくらい、人がいませんでした・・・。

戻るのに倍の時間がかかる上に道が悪いのもあるのですが。良く人が通る道はやはり歩きやすいものです。

その分ゆっくりと写真を撮ったり、今後の植物園はどういう見せ方をしようか、じっくりと考えられたような気がします。

最後のルートで特徴的だった吊り橋。

単管と足場板で作ってあります!

こういうの植物園にあったら、面白いかな・・・?

園内のひとびと

2011/08/14

たまには写真も無しにて。

 

土日は園内の広場にて、雑草の草取りをしたり、看板の立て直しをしたり、人の通るところに植物を植えたり、今後の植栽計画を考えたりしています。

人の集まる園内の広場でこういう作業をしつつ、道案内やカメラのシャッター押しや園内の解説などをするわけです。

 

草取りをしながら、目を、耳を、あちこちに傾けると色々なものが見えてきます。

園内でお客様がどのように楽しんでいるか、どうすると分かりやすくなるものか。

 

今日いちばん印象に残ったのは、とある親子のこと。

植物や山のことを小学校中学年くらいの息子に説明するお父さん。結構詳しい様子。

その子がシモツケソウを初め、色々な花の匂いを嗅いでいたこと!

小学生の男の子が花の匂いを積極的に嗅ぐとは・・・。

しかも薬品の匂いを嗅ぐように手で扇いで。化学とか好きなのだろうか。

「ボウズ。匂いがするのは花だけじゃあ、、ないんだぜ?」

・・・という趣旨の言葉を接客口調で話しかけ、イブキジャコウソウの葉の匂いを説明したところ、

「クサっ」

 

植物を覚えるのには五感を使うと印象に残るようです。

私も後輩には苦い草を何も言わずにかじらせたり良くやりました。

 

園内に来られる方々には、ひとりひとりに様々なドラマがあるようです。