緑の調律日誌

緑の調律日誌

赤いゲレンデ シモツケソウ

2011/08/12

ただいま植物園の最上部、アルプス平ゲレンデではシモツケソウが見事に咲いています!

今回の記事の写真は全て8月12日のものです。

冬は中級者ゲレンデとなるアルプス平ゲレンデ。

そこに一面にシモツケソウが咲いています!

シモツケソウの向こうから飛び立つパラグライダーも天気が良い日にはたくさん見かけます。

雪解けの遅い箇所ではまだまだニッコウキスゲが咲いています!

8月半ばでもニッコウキスゲが良い感じに見られる場所はなかなか無いかと思います。

アルプス展望リフト、園内を楽に回りたい方にはおすすめ。

今日の午後は五竜岳から白馬三山がばっちり見えました!

写真はリフトの降り場。右の方のゲレンデが赤くなっているのが見えますか?

遠くから見ても赤いゲレンデ。

放っておけば木が生えてくるような場所も、ゲレンデ維持のために草刈りをすることでシモツケソウの維持、開花には良い影響を与えているのでしょうか。

シモツケソウがここまで群生している場所はそうも無いかと思います。

ゲレンデの管理が植生にどのような影響を与えるか、そんなことを考えさせてくれます!

 

お盆の頃までシモツケソウは見ごろでしょう!

是非とも見に行ってください。

 

コマクサの見ごろは過ぎた感じですが、まだ新鮮な花を見ることも出来ます。

タカネバラが綺麗に咲いていました。

感じで書くと、『高嶺薔薇』 なんだかカッコいい。

以上、赤い花たちでした。

コマクサの大群落 草津本白根山

2011/08/04

草津の本白根山のコマクサをご存知でしょうか?

コマクサの大群落があり、登山装備でなく1?2時間程度でコマクサに出会える場所であり、多くの方が訪れています。

コマクサの群生地は遠くから見るとこんな感じです。

このアングルから見ると、コマクサの群生地だけ緑が無いことに気がつきます。

本白根山の標高は2171m。

2000mを少し超えるくらいの標高にコマクサが生育するのも他の植物の生育を許さない斜面、礫地ということによるものでしょうか。

この山系には色が紅いものが多いと聞きます。

北アルプスでは薄いピンクのものが殆どですが、この周辺では写真のような色が多いものです。

本白根山のコマクサのひとつの特徴は、多くの方によって保護、増殖されてきたものだということ。

そのような歴史、背景、想い、それらを感じながら見ると感慨深いものです。

 

10代最後の夏の学生時代、ここでサブレンジャーとして活動していたことがあります。

時には50人超の団体を3人ほどでガイド、引率したこともあり、自分にとって自然解説、ガイド技術を学んだ場所でもあります。

 

白根のコマクサは「紅」というが、かつて絶滅寸前という自生状態ではどうだったのか、繁殖元の親が「紅」でそれらの系統が脈々と引き継がれているが故だろうか、隣山の立ち入り禁止区域に調査で入った際にわずかに見つけたのは薄ピンク色だったな、などと色々考えたりもします。

ガイドルート上の定番であったヒカリゴケの観察ポイントも健在でした。

何度も登った山では、かつての発見の再確認、更新、新しい発見など色々な楽しみ方があるものです。

before,after アブラムシ

2011/07/31

ニッコウキスゲの花を見ると、それなりに高い確率で見ることのできる白いアブラムシ。

ニッコウキスゲの仲間には多く付くようです。

エスカルプラザ付近で育てているユウスゲ(ニッコウキスゲの仲間で、花や背丈は長く高く、レモンイエローの花を咲かせます)。

これにも大量のアブラムシがついていました。

※アップ画像は気味が悪いので、モザイク処理を施しております

 

これらが付くと写真栄えはせず、花の咲き方や特にタネの出来の良し悪しに影響が出てきます。

野生のものについてる分には放置しますが、間近で管理する植物には良くない・・・。

植物園に行く前に手で全て落としたことがありますが、夕方みたら瞬く間に全て戻っていました・・・。

そこで最近は薬をかけたりしています。

数日すると・・・。

あら、きれい!

人類の英知をかけた薬品は、対象が合えば効くようです。

本当はこんなことしたくはないのですが、「楽しく見せる」、「きちんと育てる」ためには必要なことでしょう。

それでも例えば木酢液とか天然素材でなんとかなるように試してみたいものですが。

植物園内のこの位置のニッコウキスゲ。歩道からよく見える場所なので、これから咲くつぼみが多かったので薬をかけてみました。

来週ごろには綺麗に咲いているでしょう。

もちろん、この処理は園内の一部のものにしか施していません!

野生のものにやると、やはり自然のバランスが崩れてくるのでしょう。そもそも数が多くてやりきれません・・・。

ニッコウキスゲの写真にこだわる方、アブラムシが全て落とせればと感じた方も多いはずです。

今回はそれをひとつ試してみたものです。

植物そのものの展示

2011/07/30

ゴンドラテレキャビンを降りて、レストランALPS360を通ると植物園に出ることが出来ます。

植物園へ出る直前のところに育てている植物や開花中の植物を展示してみました。

見ごろの花や、見てほしい植物、どういう過程で成長するのか、そんなものを間近で見ていただきたいのが目的です。

園内へ行く前に、散策した後に、「この花だったのか!」と気づいていもらえるような。

見ごろの花リストや写真はあちこちに貼ってあり、植物看板も間近にあるのですが、やはり見過ごしてしまいがちなもの。

現物を展示するとほぼ100%の方の目にとまり、好評です!

人気なのはタカネナデシコ。

女子サッカーチームの名前にちなんで急速に注目されています!

例えばタネから播いたらどのような姿になるのか、何年後にどうなるのか、そんな展示も強化していきたいと思っています!

これらは花を眺めるだけでは得られない情報、かつ多くの方が気になることでしょう!

 

一見すると花屋のような概観。

見かけた植物を手元に置きたいのは植物が好きな方の大半が行き着く先でしょう。

販売の見通しは・・・、まだ先ですが、まずはよく知ってもらうための展示から始めてみています!

慰霊碑のヘビ ヤマカガシ

2011/07/30

地蔵の頭、その奥の慰霊碑では決まってヘビをみかけます。

やっぱり不思議なのはなかなか逃げないこと。

いつもとはちょっと違った位置にいたりしました。

こちらに気づいているのか、いないのか。

ヤマカガシ、色がそれなりに鮮やかです。

よく見ると目が濁っています。

脱皮前のヘビは目が濁るもの。

脱皮のほんとの直前でしょうか。そのせいで動きが鈍いのか。

ヘビが怖くない方は慰霊碑にゆっくり近づいてみると彼らがいるかもしれません。

そっと、やさしく驚かせないように。

電気柵とニッコウキスゲ 霧ヶ峰

2011/07/27

白馬五竜高山植物園、その周辺でも見ごろを迎えているニッコウキスゲ。

園内でも数多く咲くのですが、ニッコウキスゲの群落が有名なのは霧ヶ峰のニッコウキスゲでしょう!

先日7月26日に訪れてみました。ピークは過ぎたものの、それでも数多くみられるものです。

ところで、何か違和感が・・・。

そう、シカの食害からニッコウキスゲを守るために今年から電気柵を設置しているのです。

柵が写らないように撮ることも出来ますが、記念写真などを撮ろうとすると柵は必ず写ります。

それでもやはり柵の効果はあるようで、開花のピークは過ぎたとはいえ、柵の外と中では開花量に差が出ているように感じます。

 

昔の写真を掘り起こしてみると・・・

写真は全て2005年7月17日のもの。

改めてみるとすごい群落です。観光収入もすごいものでしょう。

ニッコウキスゲ、年によって開花の量にいわゆる当たり外れが出ます。それも大きく。

例えば昨年は開花が少なかったようですが、それが全てシカのせいとは言い切れないもの。

それでも開花が少ない年は各場所が平均して咲かないもので、柵の中はきちんと咲いている今年はやはり当たり年、そしてまわりが少ないのはやはりシカのせい・・・こうなるのでしょうか。

シカが増えた、なぜ増えた、どれだけ増えた、その対策、何を守るか、生態系か、観光収入か、建前と本音、人はどう在るべきか。

様々な議論や考えはあるでしょうが、本当の答えなど存在しないだろうもので、この場では何も議論はしません。

それでも、一観光客としてみれば、柵の中だけで咲いているのは、いやだな・・・。

今後も、花が 咲く ためにはどんな 策 をとるべきか。

困ったものですね・・・。

熊、・・・熊、・・・態・・・?

霧ヶ峰にはシカの他にもいろんな動物がいたりします。

キツネに近寄ることが出来ましたが、オオカミでもいればシカを食べてくれるのだろうか?

 

最後にテーマとは関係ないおすすめをひとつ。

霧ヶ峰にある八島湿原。

この奥にある、みさやまヒュッテ。

素泊まり宿泊、喫茶ですが、経営のひとりが学生時代の友人です。

花咲く高原には、良い場所がいろいろとあるものです。

園内おすすめの花、これからまだまだ咲きます

2011/07/24

7月も終わり頃になり、8月らしい花が園内で増えてきました!

今回は一眼レフのカメラを片手に園内、アルプス平自然遊歩道を歩いて植物の写真を撮りました。

普段持ち歩いているコンパクトとは違った感じの写真が撮れるのが良いものです。

今咲いている、これからも咲いてくるおすすめの花を紹介します!

ヤナギラン。園内では群生しているのですが、いよいよ咲き始めました。

ササユリ、いかにも日本のユリといった風情た素敵です。

タマガワホトトギス。意外と存在感のある花。園内のあちこちに咲いています。

ノハナショウブ、ヒオウギアヤメ。

ノハナショウブはヒオウギアヤメよりも紫が濃く、花びらも大きいです。

少し前まではヒオウギアヤメが群生していたのに、今では8割方ノハナショウブが咲いている時期になりました。

クルマユリ。日本の高山を代表するユリ。小ぶりな花がかわいいものです。

園内ではハナチダケサシの群生が見ごたえがあります。

このそばを通るととても良い匂いがします!

園内ではコマクサもまだまだ咲いています。

群生する姿は遠くからも地面がピンク色に見えるほど。

ごくまれに白い花も見られます。

 

ここからはアルプス平自然遊歩道の周辺の植物になります。

キンコウカ。金光花、とはすごい名前ですが、湿原内に群生していて見事です。

コオニユリ。地蔵の頭周辺に自生しているのですが、おそらく地質の影響で大きいもの、小さいもの、様々な草丈のものがあります。

キアゲハが蜜を吸っていました。花粉が体にたくさんついています。

ミヤマママコナ。足元をふっと見れば以外に数が多かったりします。

オオバツツジ。ツツジの仲間では地味な方?なかなか見つかりません、探してみてください!

ホツツジ。ヤナギランと同じく、下から上に向かって次々に花が咲きます。

今では咲き始め、これから目立つツツジの一種になるでしょう。

この周辺で一本だけミヤマホツツジを見つけました。

上記のホツツジはおしべがまっすぐですが、こちらは力コブをつくる腕のように『ゝ』と曲がっています!

ニッコウキスゲの花もまだまだ見ごたえがあります!

おそらく開花数のピークは過ぎたころですが、雪解けの遅い湿原内ではこれから咲く花が多く、見ごろが続きそうです。

撮り方によって写り方がだいぶ変わるのもこの花の魅力でしょう。

ゲレンデ斜面ではシモツケソウ(右の赤い花)、クガイソウ(紫の穂)なども増えてきました。

自生の植物がゲレンデ斜面に咲き誇る季節になりました。

 

8月の花のキーポイントは『群生』。

7月のポイントは『小さく多種』。

さて、どちらがお好みですか?

それは来てみて決めてみてください!

中学生の苗作り体験 花畑を作ろう

2011/07/21

夏の白馬には多くの学校が体験学習等で訪れます。

東京から来た中学校では、民宿にグループごとに宿泊して野菜の収穫やそば打ちなどの体験を行います。

昨日、7月20日は午前、午後と中学生が植物園まで体験に訪れました。

午前中はマツムシソウの間引き、苗作り。

園内にはマツムシソウが増えたりしているのですが、混み過ぎると咲かないもので、これをまずは集めました。

これを一個ずつポットに分けていきます。

初めは手馴れないものの、作っていくうちにコツをつかむのか、どんどんポット苗が出来上がっていきます!

馴れてくると、混ざっていたモミジとかを鉢植えにしている子もいました(笑

苗作りが終わると、園内を歩いたりします。

園内に咲いているタカネナデシコを指して、「ナデシコって花を聞いたことある?」と聞くと、サッカーの女子チームのおかげで皆知っているようです!

午後のチームはニッコウキスゲの苗作りをしました。

右の苗箱に播いたタネが発芽してほど良い大きさに育っていたので、これを掘り出してポットに収めていきます。

難易度的にはニッコウキスゲの方が易しいところがあります。葉がまっすぐ、根が固いなどで。

ところで2グループに分けて個数を競わせようとしたものの、

「私たちは量より質を大事にしているのです」

実に大人な発言ですね(笑

このニッコウキスゲは園内周辺に自生するものから採種したもの。

そのようなことも説明しながら園内を散策しました。

咲き誇る花を見れば、やる気や作った苗の成長も気になることでしょう!

本日7月21日は、白馬中学校の職場体験がありました。

威勢の良い男子中学生4人とニッコウキスゲの苗作りを行いました。

今回行ったのは、ニッコウキスゲの植え替え作業。

苗箱からポットに移植したものが一年経ち、根がしっかり張り、ポットが小さくなっていたので、これを大きなポットへと植え替えます。

しかし、作業のスピードは良いものの、見る間に周りが散らかっていく・・・。

「君らの部屋もこんななのだろう!?」そんなことを言いながら作業が進みます。

およそ2時間ほどで800ポットくらいの植え替えが済みました。

馴れない作業、最初は進みにくかったものの、最後は

「キリが良くないので、これだけは仕上げたい!」

などと言うくらいにやり遂げてくれました!

君らが育てたニッコウキスゲがここ数年のうちに白馬五竜のゲレンデを黄色く染める!

そうなったら皆に自慢してくれ!

 

林間学校や体験学習などで山を歩き花を見ることは多いのですが、

一度でいいので飽きるくらいに植物を、土を触らせてみる。

そうすれば、ほぼ確実にその花のことは覚える、気になる、理解が深まる、そうなのではないかと思います。

皆さま、お疲れ様でした!そしてありがとうございました!

ガラスの内側

2011/07/20

緑のカーテン、という言葉を聞いたことがありますか?

ヘチマやゴーヤ、アサガオなど、つる性の植物を窓の外に這わせて、室内の陽射しを和らげ冷却効果を狙うもの。

それを今、エスカルプラザでも作っています。

何か違和感が・・・?

 

そう、室内にあるのです!

外に這わせることで、陽射しを和らげる緑のカーテン。

それが中にあれば、冷却効果は「ゼロ」!!!(笑

・・・しかしながら、室内にあるという植物への親近感、面白さ、意外性、そんなものを狙っています。

部屋の中にヘチマやヒョウタン、ゴーヤがぶら下がっていれば楽しいだろうと!

そんな発想から作ってみたものです。

しかし、面倒な点がひとつ。

室内に昆虫が皆無なので、受粉が起こらず実が自然には出来ないこと!

だからたまに脚立で上に上って人口受粉をしなければなりません。

・・・くそ、手間がかかる。

室内にハチでもチョウでも放してみようか・・・

 

ということで、室内で夏らしさの清涼感をお楽しみください!

緑の「インドア」カーテン、これからさり気なく流行るかも!?

外国の高山植物、いろいろ咲いています

2011/07/15

植物園には外国の高山植物を植えた区画があります。

普段なかなか目にすることの無い植物を見てもらいたいものです!

エーデルワイスも咲いています!

カンパヌラ・ガルガニカ

シレネ・アコーリス・アルバ

タマシャジン

アスター・アルピヌス

カンパヌラ・アウチェリー

ピレナイオダマキ

アルニカ・モンタナ

ヒマラヤの青いケシも咲いています!

今年は昨年より花が少ないですが、見ごろの時期を迎えています。

 

 

外国の高山植物を山の中に植栽することに、否定的な意見を耳にすることがあります。

自然の中にわざわざ植えるべきことは否だ!というもの。

それでも、やはりなかなか見られない姿の植物には多くの人が心踊るもの。

「植物」そのものに興味を持ってもらうきっかけづくりであったり、

日本の植物と比べてどうか?それを楽しみ、感じてもらったり、

寒冷地でないとなかなか育たない植物を見ていただきたい、

そんなことが外国の高山植物を展示する目的です。

もちろん、民間経営の中で多くのお客様に来ていただきたいのも本音です。

私自身、大学では帰化植物の在来種への影響などを研究していたこともあり、外国の植物導入には注意を払っています。

野生化しにくい種類の選定、種子回収などの適切な管理、それらを心がけています。

様々な考えがありますが、まずは楽しんでもらえたらということ。

そして管理する側も多くの影響を理解する必要があること。

これらを大事にしたいと考えています。