緑の調律日誌

緑の調律日誌

気になる紅葉は?

2010/10/05

今の白馬は紅葉真っ盛り!!ブナやカエデが見頃です!

・・・というには、まだ早いです。正直なところ。

では、今の園内はどれくらいなものか。

地蔵のケルン周辺はこれくらいになってきています。

黄色く見えるのはミヤマナラ、ドウダンツツジの仲間も赤く染まり始めています。

こちらはオオカメノキ。長野県内のトレッキングではあちこちで見かける樹木です。

ブナやカエデはもちろんですが、数多くの野生の樹木の紅葉、黄葉が園内周辺ではみられます。

こちらの写真は、本日5日のテレキャビン周辺の状況です。

周りはブナの木が多い広葉樹の森ですが、これが見事に色づきます。

今ではブナの先端が黄色く色づいてきています。

https://www.hakubaescal.com/green/index.html

上のアドレスは白馬五竜のトップページですが、最盛期の様子がスライドでご覧いただけます。

10月9?11日の紅葉イベントの記事もご覧ください。

 

で、紅葉の見頃はいつ頃か?

一週間くらい後が最適ではないでしょうか。

園内の上部の地蔵の頭、小遠見山などはだいぶいい感じになってきてます。

テレキャビンまわりが色づくにはやや時間がかかりそうです。

週末を過ぎるあたりから本格的な紅葉シーズンですが、テレキャビンの高低差が700mはあるので、どこかしらでは見頃な紅葉を見ることが出来ます。

そろそろ秋の風が冷たくなってきました。お出かけの際は寒さ対策にご注意くださいませ。

共通点、尾瀬の至仏山と白馬五竜

2010/09/30

夏が来れば思い出す、遥かな尾瀬、

尾瀬と言えば名前を知らない人はほとんど無く、湿原が有名な場所でもあります。

そして、湿原に隣接する百名山の2228m至仏山(しぶつさん)も知る人ぞ知る有名な高山植物の山でもあります。

至仏山の中腹からの景色です。

正面には尾瀬ヶ原と燧ケ岳(ひうちがたけ)が広がります。

ところで、この至仏山ですが、白馬五竜高山植物園の上部に整備されている歩道、地蔵の頭を中心とするアルプス平自然遊歩道と一つ、大きな共通点があります。

これは登山道の光景ですが、アルプス平自然遊歩道を訪れたことのある方、なんとなく岩の雰囲気が地蔵の頭に似ていると思いませんか?

これは超塩基性岩の「蛇紋岩」という岩石になります。

そして、この岩の特徴は『植物の生育には適さない』、というもの。そのため、高い木が生えにくくなり、蛇紋岩地域での生育が可能な植物や、高い標高でないと見られない背丈の低い高山植物がみられるようになります。

この特徴は地蔵の頭でも同じであり、ミヤマナラを中心として本来の標高には見られない植物が出現するのが共通しています。

 

ところでこの蛇紋岩、滑りやすい石としても有名です。

至仏山の登山道では蛇紋岩の上を歩く箇所が多く、水も良く染み出ていて滑りやすくもあります。

また最近では、下りでは転びやすい事、植生保護のため、尾瀬ヶ原側の斜面は上り専用にもなっています。

※アルプス平自然遊歩道では滑りやすい箇所はほとんど無いです

※上記の「正しいすべり方」は、山の鼻ビジターセンターの展示物です。滑りやすさと安全喚起を促すものです、念のため。

 

尾瀬の山に似た特徴が園内にもある、そう考えると至仏山が身近にも思えてくるようです。

高い木が無く、紅葉がきれいな低木も多くなるのも特徴的あり、これからの秋が楽しみでもあります。

晴れ+山が見える!

2010/09/25

今日(25日)は最高の快晴でした!

テレキャビンで上がった園内からは標高3000m級の北アルプスが一望出来ます。

AM8:00の園内の様子。写真左の山は白馬三山です(左から白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳)。

視線を左に移すと北アルプスの山並みが続いています(写真左が五竜岳)。

 

山頂付近の白い岩肌と木々の濃い緑のコントラストが実に鮮やかです!

秋といえど、これくらい晴れる日は珍しいものです。

あたりは冷たい空気が気持ち良くとも寒いわけではない、そんな感じです。

この土日で北アルプスに登る方々は最高だったことでしょう。

夕方5時近くでも、これだけ晴れています。

秋の花は園内や遊歩道にさりげなく咲いています。その分、一面に咲く派手さが無いので遠目には気づきにくいところもあり、だからこそ秋晴れの景色のもとで、この広い空間と合わせて楽しんでいただきたいものです。

明日も晴れでしょうか(追記:『晴れ』と『山が見える』は別モノですが)。

皆様が訪れる日も良い天気であることを願いつつ。

種をまく事

2010/09/24

植物の「種」を一度も目にした事がない人はおそらくいないし、ほとんどの方が種をまいて植物を育てる体験をしたことがあるかと思います。

小学校のころに植物の種をまいた時は、芽が出ると誰しも大なり小なり感動を覚えるものです。

そしてそのトキメキを今も忘れぬまま、いや、更に深めて植物園で育苗を行っています。

昨年から種をまき始め、今ポットの形になっているものは記録しているだけで7815ポットでした。

管理している私の技術も、育てている数も植物園としては小規模ですが、今後も進歩させていきます。

 

ある植物の先生が言ったこと、

「野生の植物が種を落として、それが芽生えて育つ確立なんて何万分の1も無い。きちんとした管理で種をまけばかなりの確立で芽を出させ、育てることが出来る」

なるほど。タンポポもコマクサも、ひとつの花からは相当な数の種が出来ます。しかしそれが「芽生え」、「育ち」、「花を咲かせる」には相当な淘汰を受けることになる。

例えばこの3段階がそれぞれ1/10の確立で次のステップへ行くとしても、1/10×1/10×1/10で1/1000、種1000個あっても一つ咲くかどうか。実際はもっと条件は厳しいでしょう。

 

自身で種を育てると色々なことがわかります。

例えばニッコウキスゲは4月から9月までで、これくらい育つのだなとか、

フシグロセンノウは一年でしっかり花が咲くのだな、とか。

技術書や人から聞いたものであっても、自分の目で実践すると確実に理解でき、野生の植物を見る視点も多角的になってきます。

育苗施設は今のところ一般の方へは非公開です。

しかし、栽培の手順などを踏まえ、植物の成長過程、それらの野生での姿、そういったものを解説したガイドツアーなどもいずれ整えていきたいとは考えています。

育てた苗を種類とタイミングをみて植物園内に植えたりします。

写真では園内のロックガーデンの滝の横に植えているところですが、こういう植栽をする場合、大きすぎる、小さすぎる苗ではうまく小さな隙間に収まらず、自社で育苗していると適切な大きさのものを選択出来るという利点があります。

植えたもの全てが育つとは限らないものの、根付いたものは確実に岩の奥まで根を伸ばすでしょう。

・・・それにしても、手をかけた植物たちが園内とはいえ、朝早く来て水をやり、就業後も気づいたものからポットにわけて、育てていたものが手を離れるのは・・・「貴様に娘はやらん!」というお父さんの気持ちもわかる気がします (私は25歳独身ですが

 

野に咲く花の種が花を咲かせる確立はゼロに近い数。

連綿と続く生命の確率論、それをいかに1に近づけるか。

確かな答えは出ないものの、答えを目指して探究心は続きます。

ちょうちょ

2010/09/19

秋の気配が濃くなってきた園内でも、元気にチョウが飛んでいることがあります。

こちらはアサギマダラです。

アゲハチョウくらいに大きな体ながら、フワフワと飛ぶのでなかなかに目立ちます。

海を渡るチョウとしても知られ、1000km以上も移動することもあるようです!

見つけたのは園内でもリフト乗り場のすぐそばですが、運が良ければリフトに乗りながら見られるかもしれません。

写真のようにヨツバヒヨドリ(もしくはフジバカマ)の蜜を吸っていることが多いです。

コンパクトデジカメで数cmまで近寄って撮ったものですが、ピュアな心持ちで驚かせないように近寄りましょう(笑

こちらはキアゲハです。地蔵の頭で良く飛んでいるのを見かけます。

アゲハチョウはミカン科の植物を、キアゲハはセリ科の植物を食べます。

園内ではシシウドなどを探すと幼虫を見つけることが出来ますが・・・

育苗しているセリ科の植物までも食べてしまいます・・・。

育てている苗は、風通しも良く、同じ植物ばかり並べているので、きわめて親の虫に見つかりやすく放っておくと散々なことになることが多いです。

ガの幼虫など大抵はつぶしてしまいますが・・・、昔からアゲハチョウは良く育てていたため、ドライになりきれず情も移り

「おい、てめえら、あっちのヤブのシシウドでも食ってくれ」ととりあえず移してみます。

ところで、この夏、初めて見たのがコマクサの花をがっつり食べられているところ。

花茎にシャクトリムシが一匹、懸垂するようにぶら下がっています。

シャクに障るとは、こういう事でしょうか(笑

 

話がチョウを見ようから、葉が食われることに逸れてしまいました。

園内では植物の他にヒョウモンチョウの仲間やクジャクチョウなど高原らしいチョウも多く見られたりします。

視点をそちらに移して園内を見るのも楽しいかもしれません。

チョウが蜜を吸うための花と、幼虫が食べるための植物と、両方バランス良く育てたいものです。

ウラ開花情報

2010/09/16

ナントカ心と、秋の空。標高1500mの植物園内は天気がコロコロと変わります。

ここ3日ほど天気が悪い日が続いていますが、写真の日(13日)は、夏のような秋のような空が特徴的でした。

 

秋のサンマのように、旬のもの、季節の花々はその時に感じたいものでもありますが、やはり珍しいものが好きなところは多くの人にあったり、季節でないからこそ見られて良かった、ということもあるものです。

今、園内で咲いている、されど正当な開花情報には載せにくい花を紹介します。

(注意! 「見頃」の花ではなく、咲いていても数株だったりします。確実に見られるわけではなく、場所や状況など問い合わせはご遠慮願います)

ご存知、チングルマです。雪解け後すぐに咲き、園内では6月後半が見頃ですが、園内の2箇所ほどで咲いていました。

こちらはチョウノスケソウです。チングルマと同時期に咲き、種もどこか似ています。開花は1株のみでした。

ハクサンイチゲです。初夏の最初のころに山に登ると白い花が一面に見られたりします。園内では6月末から7月最初に見られる花ですが、どうしてか園内のロックガーデンでは結構な数が咲いていました。

イブキジャコウソウです。ほとんどが種になった中で、ごくたまに花が咲いていたりします。もともと花数が多い花なので、変わり者も毎年出ています。

アオノツガザクラです。雪のたまるような所に見られるツツジの仲間の低木で、園内では7月はじめに咲くものの、数株は毎年この時期に少しだけ花を咲かせています。

アカモノです。7月ころに咲き、夏から秋にかけて赤い実をつけますが、左上にその実が見え、しかし同じ株には花が咲いています。

コマクサです。一番の見ごろは7月ですが、今まで紹介した花とは違い、この花は細々と今まで咲き「続けて」います。

 

これらの花は来週にはどうなっているかは予想がつきません。

そして、最近の雨や低温で勢いが無くなってくるかもしれません。やはり、旬の時期に見るのが一番ですね。

今はリンドウやウメバチソウの類や、マツムシソウ、オミナエシ、ノギクの仲間などが旬です。

週末はイベントも行われます。→https://www.hakubaescal.com/green/event/index.html

けれど、背の高い秋の植物とは視点を変えてみれば、足元には初夏の高山植物がもしかしたら咲いているかもしれず、そして花は無くとも、来年花を咲かせる植物が確実にそこにいるわけです。

花の有無に関わらず植物そのものを見ること、見えにくいものにも目を凝らしてみようとすると、また面白いのかもしれません。

タネを集める

2010/09/10

「ユウスゲ」という花をご存知でしょうか?

ユリの仲間で、ニッコウキスゲに近い種類、と言えばピンと来るかもしれません。

野生ではニッコウキスゲよりも標高の低い場所でみられ、ニッコウキスゲが登山の花なら、ユウスゲは長野県では人里やや高めの場所で咲いています。

漢字では「夕菅」。その名の通り、夕方から朝にかけて咲きます。

…個人的には、ニッコウキスゲよりもユウスゲの方が好きだったりします。ニッコウキスゲよりも背が高く、花の線は細く、色使いもレモンイエローと優しく、どこか女性的なものを感じます。

また、ニッコウキスゲと違ってはっきりとした匂いがあるのが特徴です。

しかし…正直ビミョーな匂い……。花の時期は過ぎているので、来年ぜひご確認を。

 

このユウスゲ、高山植物園内にもみられますが、それよりも山麓のエスカルプラザまわりに多く花を咲かせます。

そしてその種が採りどきでもありました。

果実から黒い種が覗いて見えるものを集めたところ、どんぶり一杯ぶんくらいになりました。

これを自宅でテレビを流しながら、落花生のカラを剥くように延々と種を取りだします。

ところで、気になったのは一つの果実(一つの花)には種がいくつ入っているのか?

健全な果実を10個選んで種の数を数えました。

22、23、28、24、13、28、29、34、17、15、合わせて233個。

果実一個あたりに23.3個の種が入っていました。

一つの茎に花が複数つくもので、例えば一株に5個花が咲き、上手く種が実り育てば、一本のユウスゲから100本のユウスゲが育つのか!

しかし、アブラムシにかかったものは種が一個、0個のものもあるので、世の中上手くはいきません。

米のように研ぎ、米用の計量カップで計ったところ、今回1.5合の種が取れました。

このまま炊飯器で炊いてしまいたい誘惑にかられますが…、なんとかこらえて大事に育てるとしましょう。

 

ちなみに熟していない種がまだ敷地内にたくさんあります。

これらを全てうまく育てれば…、素晴らしい花畑が出来ることでしょう!

ただし、ニッコウキスゲのように自生で群落を作るような種類ではないので、自然に見せつつ、上手く魅せられるような植え方をしたいものです。

秋に見られる花々

2010/09/06

9月になっても各地では猛暑続きのようですが、標高1500mの植物園内は晴れても気温は22℃くらい、爽やかな気候を味わうことが出来ます。標高700?800mの白馬山麓でも夜中は19℃くらいと実に快適です。

さて、最近の園内の植物ですが・・・正直な話、今は園内に花が少ない時期ではあります!(このブログを見ている方は今のところ来園者数に比べ少ないだろうと信じて)

7月のように高山植物が多いわけではなく(コマクサはまだ何とか咲いていますが)、8月のようにシモツケソウが一面を覆うわけでもなく、そもそも各植物園に聞いてもこの時期は花が少なくなる時期のようで。

しかし、この時期に花がないというと、勿論そんな訳はなく、むしろこの時期だからこその花も多く咲いています。紅葉前の残暑を優雅に過ごすための園内の花を紹介いたします。

ということで、ユウガギクです。しかし漢字は柚香菊となります。

本当に柚の香りがするのか…?ぜひとも園内を訪れて確かめてみてください。

(多分しない…いや、ご自身で是非とも!)

こちらはノコンギクです。野紺菊、野の紺色のキクですが、まさにその通りです。

この時期はいわゆる「野菊(ノギク)」の仲間が咲く時期です。

さりげない美しさの野生のキクを味わうことが出来ます。

こちらの花は、ご存知ですか?名前は絶対聞いたことあるでしょう。

ミヤマトリカブト、いわゆるあの毒草のトリカブトです!

毒草のイメージのみが先行する花ですが、野草としては他に例を見ない形であり、紫の色が秋の中に馴染む独特の美しさを持った花でもあります。

今年の園内は青いケシが大人気でしたが、では「赤い花」には何があるのか?

この花はエンビセンノウです。花びらの先が二つにわかれた様子が燕の尾(燕尾=エンビ)に似ています。

赤っぽい花というと沢山ありますが、ここまで「赤、Red」という言葉が合う花も少ないのではないかと思います。

こちらはツリフネソウといいます。船が吊り下がっているように、見えますか?

山麓に自生していたものを持ってきたものですが、良く咲いてくれています。

山野草には珍しく一年草であり、1mにも達することがあるのに芽生えから数カ月で咲いて、種を飛ばして枯れます。

実を指で触ると勢いよく種がはじけます。ホウセンカの仲間と言えばピンと来るかもしれません。

ちなみにツリフネソウ属の学名Impatiensの意味は、「我慢できない」だそうです…笑

こちらは、オヤマリンドウ、コウメバチソウ、マツムシソウです。

いわゆる定番の秋の花、とも言えるかもしれません。それだけに見応えがあり、秋の風に合う花々でもあります。

特にこの3種類は花期も相応に長く、もっと増える時期ですので、これから園内に来られる方にはぴったりの花でもあります。

ところで、こっちは全くもって定番ではない花です。

オオイタドリですが、いわゆる雑草。しかも背丈は3m、葉っぱは30cm、白い小さい花の数だけ繁殖力の強い種がまき散らされる、駆除しようにもしきれない、ゲレンデから谷間から、あちこちを埋め尽くすある意味最強の植物のひとつです。

しかし、遠目にみてそのダイナミックさ、鮮やかさは、相応にきれいなものとも思いますが、いまだにこの花の美しさに共感する人には会ったことありません…。いかがなものでしょう。

秋晴れの下ではゲレンデからパラグライダーが次々に飛び立っています。

ライダーとパラグライダーは晴れになると良く見かけますが、今は良い時期です。

黙っていても晴れる確率が高そうなので、気まぐれの避暑にでも園内を訪れてみてください!

高知県での植物

2010/09/04

しばらく高知まで行きました。

園芸、植物園関係者の懇親会が大阪であったものの、若い会員数名が「高知へ植物を見に行こう!」という、という企画があり、真夜中に高知へ向けて出発したものです。

高知県立の牧野植物園の方が講師役としての植物観察会への参加としての植物観察。

市内近郊の山ですが、海に近い標高にも関わらず、大規模な草原の景観、草原性の植物が数多くみられ興味深い山でした。

馴れない四国だけに聞いたことのない植物も多く、メモやシャッターを押す手が止まりません。

県内では絶滅危惧種のものも高知では普通種であるものもあったりするようです。

そして、今回のメインとも言えるダイサギソウは見事なものでした。

午後は植物学者の牧野博士ゆかりの山まで数人で植物観察へ。

薄暗い林の下でコオロギランを見ることが出来ました。花は数ミリの大きさで、午前中のダイサギソウと比べると華やかさはやはり劣りますが、博士が新種として発見した植物を本場で見ることにはロマンがあるものです。

 

日本が世界に誇る植物学者の牧野博士の業績を顕彰する「牧野植物園」を尋ねました。

近代的なデザインの建物に一流の研究体制を整えた植物園は想像以上に「植物園としての理想」を具現化している植物園であるものと実感するものでした。

高知の植物を収集した生態園、高知の植物相の学術的調査や保全活動、薬学的視点での企業との連携、温度・湿度を正確に保つ標本庫、レベルの高い一貫した展示解説、何よりもそれらを管理する人たちの確かな技術と熱い思い。

 

自身のいる植物園、身近なフィールドを良く知ることは必要ですが、更に良く知るためにはやはり多くの他の場所を見ることも必要なります。

あの植物はここにしかないのか、他ではどうなのか、比べてどうなのか。

人と場所と植物が同じ植物園はどこにも無い、では自分と自分のいる場所は、どうあるべきか。

そんなことを考えながら、今日も園内の作業に励む日々です。

咲き続けるコマクサ

2010/08/26

白馬五竜高山植物園でも象徴的とも言えるコマクサの花。

高山植物の女王としても知られ、全社員の名刺にも描かれています。

このコマクサ、6月の終わりから咲き始め、7月には最盛期を迎えます。

…では、開花はいつ頃終わるのか…?

実は8月最終週の今でもこれだけの花が咲いています。

写真をよく見ると、花がついていない花茎がありますが、これは既に花が種となり落ちた跡です。

このコマクサ、存外に花期が長く、6?7月に咲き始めた最初の花が種となった後も新たにつぼみが出てきて花を咲かせます。

ドライに考えれば、植物園を経営する上では花期が長い、それだけで魅力的な商品であると言えるでしょう。

そう考える前に、何と強くたくましく、可憐な花なのだろうかと感じるものです。

高山の短い夏という限られた時間で最大限の繁殖を行い続け、子孫を残すという目的を達成している進化の一つの形なのかもしれません。

そして、その種子繁殖もなかなかのもののようです。

昨年パラパラと種を蒔いてみたところからは無数の芽生えが見られます。(画像をクリックしての拡大推奨です)

この種が花を咲かせるのはいつか?

試しに同環境で実験をし、経年変化を観察したところ、最短で2年で花が咲きました。3年経つと充分な大きさで花が咲きます。

コマクサが咲くには長い時間がかかる…とよく言われますが、山の厳しい環境では、おそらく岩も崩れやすく時には根や葉が寸断されたり、強風、凍結などの影響もあり、時間がかかるのでしょう。

しかし、生物的には存外に早く成長する能力を備えているようです。だからこそ他の植物が生存し得ない厳しい環境で生き延びているのでしょうが。

植物を見に来られる方の多くが憧れるコマクサの花ですが…、知れば知るほど、魅力的な高山植物に思えてくるようです。