緑の調律日誌

緑の調律日誌

秋の花は今の晩夏に

2010/08/22

ふとした空気の変化に季節を感じることがあります。

そして、そろそろ「ああ、秋の匂いがするな」と先日感じました。

アルプス平自然遊歩道では、タムラソウの花があちこちで数多く咲いています。

一見するとアザミのようですが、トゲが全然無いのが特徴です。

トゲの無いタムラさんは、ちょうちょにも好かれているようです(笑

もっとも名前の方は、田村さんではなく、紫が多い「多紫草」と来ているらしいですが。

アルプス平自然遊歩道では、コウメバチソウの花も多くなってきています。

9月になると、一面が白くなるくらいに群生しています。

私も一応、植物を見る視点であちこちの自然地域を見てはきたつもりですが、この場所ほどコウメバチソウが群生する場所は見たことが無いです。最も適した生育場所…、ということなのでしょうか。

園内ではヤナギランが最後の花を見せています。

実はこのヤナギラン、下から上へ咲くのです。

だから、茎のどこに花がついているかで、花期のいつ頃なのかが一目でわかります。

先端がわずかに残るこの花はもうすぐ花も終わり。そして綿毛が飛んでいきます。

 

タムラソウやコウメバチソウ、もう秋とも言える花が目立ってきています。

咲いている花からは秋の感覚が強く感じられますが、まだまだ秋には遠いようです。

なぜかって・・・・・・

キレイな秋の花には、飽きが来ないのですよ。

でっかいワレモコウ

2010/08/17

ワレモコウ、という花を御存じでしょうか?

すっ、と伸びた茎の先に、指先くらいの紅色の花を咲かせる草原の花で、主張しすぎない美しさがある花です。

そのワレモコウの仲間の「カライトソウ」が現在、園内で最盛期を迎えています。

とても鮮やかな赤色が目立ち、見応えのある姿を見せますが、私は心の中で「おばけワレモコウ」などと呼んでいます。

近縁種のワレモコウに美しさを感じたことのある人から見れば、「ワレモコウを見習って、もう少し控え目にしてみろよ」・・・とおそらく思ってしまうくらいに目立つ姿と迫力を持っています。

山で見かけるカライトソウは、それなりに繊細なものでもありますが…、園内のものは良く育っています。ワレモコウと比べて観察出来る時期、今のおすすめです。

ヒマラヤの青いケシ、今年はよく咲いてくれました。

一番の見ごろ(花が多く、または綺麗に見られた時期)は、7月上旬?中旬でしたが、まだ最後の花が咲いています。

花は植えから順に咲いていくのですが、もう本当に最後ですね。来年また綺麗に咲かせられるようにしたいものです。

アカバナシモツケソウ祭り

2010/08/08

アルプホルン、見たこと、聞いたことありますか?

8月7日のアカバナシモツケソウ祭りのイベントとして、アルプホルンの演奏が行われました。

バックに見える北アルプスは、山頂が見えませんでしたが、この楽器の音と姿は園内のロケーションに実に合う楽器だと思っています。

アルプホルンを木材の採集段階から自作する方と知り合いですが、「今度貸すからツボイ君も練習しなよ」と言って下さっています。

植物園業務の休憩中に園内で練習…。ああ、カッコ良すぎる。

この時期の植物園上部のゲレンデ斜面には、アカバナシモツケソウが一面に群生しています。

蛇紋岩という特異な地質の為か木が生えなかったり、ゲレンデ整備として草刈りを行う為に草原になっている場所で群生しています。自生のものでこの規模でみられる場所もなかなか無いはずです。

写真の道は、実は重機用の作業道です。

この時期だけロープを張り、散策出来るようにしてありますが、是非とも歩いてみてください!

園内のアカバナシモツケソウ

2010/08/02

園内では、アカバナシモツケソウの花が今、満開近くを迎えています。

この場所で「写真をお撮りしましょうか?」と声をかけたりもしますが、赤い花畑の中にいるような写真になり、大好評です。

ところで、植物園の上部のスキー場、アルプス平ゲレンデでは数多くの自生のアカバナシモツケソウが一面に咲きます。

ゲレンデの管理として草刈りを毎年行っているのが影響しているのでしょうか。他では見たことのないようなアカバナシモツケソウの群落が成立しています。

この場所の見ごろはあと一週間、といったところでしょうか。これからもっと赤色が濃くなっていきます。

紫色のクガイソウや、白色のヤマブキショウマなどとも合わせてみられ、イワショウブ、ワレモコウなども多く、草原の植物愛好家にも十分に楽しんで頂ける場所にもなっています。

 

8月7日、8日には、アカバナシモツケソウ祭りが行われます!

→ https://www.hakubaescal.com/green/event/hanahana.html

こちらも合わせてお楽しみください!

休日や就業後に

2010/08/02

休日や就業後には、バイクで出かけ植物を探したりすることがあります。

3メートルを超えるような「草」であるオオイタドリのトンネルをくぐりながらも見つけた植物が。

あ、やせいのシナノナデシコがあらわれた!

白馬岳登山にて、鑓温泉からの帰り道などで見かけたこともありますが、あまり野外では見かける機会は多くなかった植物です。

この日見つけたこの場所では、このシナノナデシコが今までに見たどの場所よりも多く咲いていました。

植物園内に生育するシナノナデシコをかき集めても、この場所の半径数メートルの方が断然数も密度も多いくらいに。

実は白馬駅から数キロと離れていない、なんてことのない河原です。

 

河原、というのは存外に珍しい植物がみられたりすることが多くあります。

高い木が生えていない、石がゴロゴロしている、などの環境は、ある意味で高山に似たところもあり、また上流から種が流れてくることもあることにもよります。

 

例えば白馬岳に登れば、例えば植物園を訪れれば、当たり前のように多くの植物を見ることが出来ます。

しかし、何かの植物はないかと、誰も知らないような場所を探し、探し当てた時は、楽しく、何事にも代えがたいものです。

こういった「ヒミツの場所」を、植物園を訪れた別の日に、探してみるのも面白いかもしれません。

緑のコントロール

2010/07/31

園内では、赤い花をたくさん咲かせるシモツケソウが、満開近くになってきました!

ところで・・・、奥にある花の方が色が濃く、花が多い気がしませんか?

「いや、それは角度による見え方や、写真の撮り方によるものでは?」と言うかもしれませんが・・・

ホラ、この通り!横からインチキ無しに撮っても、やはり違います。

実はこれは肥料によるものです。

昨年この場所のシモツケソウは、うどんこ病にかかり、ほとんど咲きませんでした。

間引きや堆積した落ち葉をどかすなどして、風通しを良くし、手入れをした結果、順調に育っているようでした。

そして、肥料をまいたらどれだけ成長に違いが出るか、を確かめるべく実行したところ、面白いほどに結果が現れました。肥料を与えると、見た目でわかるほど葉の色が濃く、花も良く咲いていました。

それらの違いを記録として残すのも面白いかもしれませんが…、

研究のための研究として、数値に残すには、いまいち頭と時間が追いつかないので、

用のための研究として、頭の中に蓄積していこうかと思っています。

そして様々な植物で試したその結果を今後は植物の種類と目的に合わせて肥料を使い分けるなどしていきます。大きく育てるべき植物、小さく魅せるべき植物、それらに合わせ。

上の写真は、道から見えない園内の真ん中ですが…、宝の山とも言えます。

イネのように見える細い葉っぱ、種から育ったニッコウキスゲですが、密になりすぎて花が咲くに至っていないようです。

ためしに掘り上げてみると、大きさは十分。日当たりよく、用土にも栄養のある場所に一本ずつ植え直し、肥料を適量置いてみました。もとあった場所ではニッコウキスゲがあまり咲いていないだけに、植え直した場所で来年に開花が多く見られれば、処置は適切であることになりますが…来年をお楽しみに。

種子による繁殖も昨年から試しています。霧ヶ峰のようなニッコウキスゲ群落を人為的に創り出すことを目標にしつつ。

園内では、近隣の関係ある企業様が、ボランティアとして作業に参加して下さっています。

今回の作業は、コマクサ群落の手入れです。

コマクサを植栽している箇所の用土の劣化によりコマクサの開花数が以前より減ってきていたため、全面改修を行っているところです。昨年の施工場所では、予想以上に新規の芽生えが多く、開花株もしっかり育っていました。

いくつかのトライを経て相応の結果を導き出し、必要とあらば大人数で目的の達成に向かう…。この流れを上手く作っていきたいところです。

今日園内に、このブログを見た!という方が園内に来られ、私を探していたとのことでした!

前回の「自然に見せるためには、100本のユリで埋め尽くすよりも、95本の雑草が5本のユリを引き立てる構成にすべく」というくだりに共感して下さったとのことで、ありがとうございます。

以前には「カブトムシは本能で、植物は理性で学び始めた」という内容に感心した、という方がいたとも聞いています。

最近のこのブログ…、開花情報よりも、植物に見る精神論的なものも多くなってしまっていますが、今後ともよろしくお願いいたします。今後も様々な情報、意見等を載せるようにしていこうと思っています。

白馬岳登山

2010/07/28

ハクバ村にあるシロウマ岳。

いわゆる登山を始めたのは信州大に入ってからですが、25歳の今、白馬岳は信州に来てから毎年登っていて今回で8年目10回目の登山になります。

今までは、植物調査目的で登っていたもので山小屋泊でしたが、今回は単独で日帰りをやってみようと思って登ったものです。

朝5時に猿倉に到着し登山開始。写真は大雪渓手前の白馬尻ですが、最高の天気です!

ところで、偶然にもここで、園内のイベント時には合唱をやって頂いているハーモニー白馬のメンバー方に出会いました!登山をして、山頂付近にてみなさんで歌うとのことで・・・。とても楽しそうでした。

大雪渓を登ります。どうやら、下は雲海につつまれており、頂上に着くまでに曇ってしまったらどうしようかと気になります。

大雪渓は落石が多い場所で多くの方が無くなっている場所でもあります。

ラクあれば苦あり・・・。ひたすら上を目指します。

雪が多かった影響か、以前にこの時期に登ったときよりも植物がやや早い気がしました。

それでもハクサンイチゲなどはみな新鮮な花で数多くあり、良いタイミングでした。

クルマユリやハクサンフウロなども多くみられます。

白馬五竜高山植物園には、「白馬連峰高山植物生態園」と名付けられたロックガーデンがあります。

白馬連峰の植物を自生に近い形、植物群落で観察出来るものを目指したものですが、再現すべき自然が目の前にあるわけで、それらを写真、数値、メモを交えながら、自身の経験として積み重ね、用いるべき資料としていきます。

辿り着く結論は、誰もが注目する華やかな花はもちろんのこと、誰もハナから注目しない花も入れなければならないこと。

クルマユリという主役を引き立たせ、健全に育てるには、ヨモギ、セリ科、タデ科、イネ科、スゲ類といった地味な植物も交える必要があります。自然に見せるためには、100本のユリで埋め尽くすよりも、95本の雑草が5本のユリを引き立てる構成にすべく。

登り進めていくと、ハクサンイチゲと並ぶこの時期の花、シナノキンバイも増えてきます。

この時期の「お花畑」はやはり良いものです。

変わったイワギキョウを見つけました。

左の方は、花が2つくっついてしまったのでしょうか?右の形が正常ですが、こういった奇形や色違いなどを見つけだすのも面白いものです。

信州大の頃は、植生復元活動、その調査にて白馬岳に登っていました。

踏みつけ等により植生が荒廃した場所にネットを張り、その効果を毎年記録するというもの。

今では、一連の活動は一通り終了していますが、果たして今はどうなっているのか。

毎年それを見に行くために登っています。ウルップソウの実生が多く育っていました。

大雨や強風であっても高山で調査をするという技術や心構え。それらは間違いなくこの場所で身に付けたもの。かつての仲間との苦楽を思い出しながら、私はこれからも毎年この場所を訪れます。

やっぱり山頂は良いものです。富山県側から周辺の山々のほとんどを見渡す晴天でした。

しかし、眼下にある大雪渓は雲に包まれており、今登っている人は何も見えていない状況でしょう。

ちなみに、この後下山中は太陽が隠れ、車に乗ると雨が降りました。運が良かった。

? 

人によって山に登る理由やスタイルは様々です。

ピークハンターや、タイム短縮を目指す人も多いですが、私の場合は植物や景色を眺め、写真に撮りながら気ままに登ります。

それでも一応区間時間を数えてみると、休憩や写真撮影、植物観察を含め、猿倉‐白馬岳山頂は、登り5時間15分、下り2時間45分でした。日帰りが十分出来ることがわかったので一日の休みでも気軽に来られそうです。

そして、まだまだ体力は向上中のようです。来年もこれからも、健康に登ることが続けられたらいいなあ。

コマクサを植えよう!

2010/07/24

24日、白馬五竜高山植物園にて、

テレビ信州主催イベント「北陸コカ・コーラプレゼンツ 標高1500m!天空のお花畑を作ろう!」が行われました。

私も園内ガイドとして先陣切っての参加です。イベント用の赤いTシャツを着てます。ああ、コーラが飲みたい。

イベントとしては、高山植物の代表格であるコマクサを植えることを通して、貴重な高山植物の生態や実態に触れてもらおうというもの。

今回は長野県内在住のご家族18組59名様が参加されました。

コマクサ、高山植物についてパネル説明等をした後、コマクサの長い根をうまく植えるような説明をしつつ、実践して頂きました。

植えたコマクサの横には、個人個人の名札が。

来年、再来年に訪れた際に、自分のコマクサがどれだけ育っているかが楽しみです。

みんなで記念撮影の後、テレビ信州さんなので、例の

「マイチャン!テレビ信州!」

と皆で言う例のアレを取りました。例のアレです。

そのうち「白馬五竜高山植物園」として映るはずです。私は、左端の方に居ます。

 

今回のイベントのことは、7月29日のゆうがたgetにて放送予定です。どうぞお楽しみに!

梅雨も明けて

2010/07/21

連休までは雨続きでしたが、ようやく梅雨も明けたようで毎日良い天気が続いています。

それでも北アルプスが一望出来る割合は半々で、午前10時を過ぎたあたりから山頂に雲がかかることが多いようです。

やはり、青いケシの知名度と期待は大きいようで、連休中にはたくさんの方で賑わっていました。

今では混雑も解消されていますが、花は変わらず咲いています。今の時期、まだまだ綺麗に咲いていますので、特に平日はゆっくり見られるのでおすすめです。

自然遊歩道では、ニッコウキスゲが最盛期を迎えています。湿原の木道沿いには多くみられます。

実はこの花、「一日花」と呼ばれ、今咲いている花は一日でしぼんでしまいます。写真のものでは、バックにつぼみが4つ見えます。これが次々に咲いてきて、一日ごとに花が入れ替わっても、総じて遠目にはたくさん咲いているようでに見えるわけですね。

 

最近花の移り変わりがとても早いです。

園内を回る度に、

「この花はもう咲き終わったのか…」

「もうこの花が咲き始めたのか!」

その繰り返しです。

…今ある花は、今しから見られない。

そんなつもりで園内を回ってみると、ちょっと気分が変わるかもしれません。

こまくさ祭り 7月17日?19日

2010/07/17

いよいよ三連休!今日の園内は入道雲も浮かび上がりました。

この連休中はこまくさ祭りということで各種イベントも行われています。

鍋の振る舞い、シンセサイザー演奏、コーラス、抽選会など色々とです。

イベント情報ページ ↓ https://www.hakubaescal.com/green/event/index.html

大体のイベントが昼頃に集中するので、11時頃までに園内にお越し頂くのがおすすめです!

園内では白いコマクサが咲いていました。よく「白いのはどこ?」と聞かれますが、広いコマクサの場所では口で説明しにくいことと・・・、やはり自身で見つけて感動して頂きたい!

そういうことで「じっくり探してみてください」とお答えしております。

それにしても青いケシが人気です!

先端の花は散ってしまいましたが、2番目、3番目の花が咲いてきて、鮮やかな青が目立っています。

夏盛りの涼しい高原の高山植物園。

旅行に避暑に、お越しください!